牛たんを、満腹食べて、逃す飛行機、空に見る

 喜劇の原因は前日の倹約癖から発生した。

 日曜日(2002. 1. 27)の昼、仙台一円に多くの支店を持つ「伊達の牛たん」という店の前で、私はメニューをよだれをたらしながら、眺めていた。

 「あかん、騙されたらあかん」。「観光ビジネスにはまったらあかん。牛タンに1200円も払ったらあかんわ」と思ったのです。

 でも、「せっかく仙台に来たら・・・」と財布と相談し、2ランク下の「牛タンカレー」で我慢した(850円)。




 ところが、「あれ、これって、牛タンが入ってないやん!」

 そして、私は次の瞬間考えた。

 もしかして、「(コーヒーを牛たん屋で頼んでも、コーヒーの中に牛タンが入っていないような意味で)、たまたま牛タン屋で出されているカレー」であって、「牛タンが入っているカレー」ではないのでは?と。

 残念になった(同じカレーならばもっと安いのがあったろうに)。



 帰りにレジのねーちゃんに「ここのカレーって、牛タン屋さんで作ったカレーという意味であって、牛タンが入っているカレーじゃぁないのですね」と

 「いいえ、四角い大きな肉が入っていたでしょ、あれが牛タンですよ」と、そののねーちゃんがお答えになった。

 私はホッとした。

 その夜、私は翌日の飛行機の特割をインターネットで予約した。 特割対象となるのは、翌日12:10発の一便だけで、大阪伊丹まで17500円だった。

 夜、私は「あかん、ここで観光業界に踊らされて仙台で牛タンを食べたらいかにも批判精神があらへんやん」、とも考えたが、「やっぱ、せっかく仙台北のやし、二度と来ることないやろうし、一度食べておこう」というミーハー気分に負けた。

 それで、翌朝10:00に旅館(一泊4300円!)をチェックアウトして、「伊達の牛たん」に向かった。

 しかし、昨日行った「伊達の牛たん」のJR仙台駅地下店は11:00からの営業であった。けれども、近くから出発する空港バスは11:00発のものが目的の飛行機に乗車するためにはギリギリであった。

 私はあわてて、他の支店を探し、やっとJR仙台駅三階の同系列店に入った。

  (1200円でした。大阪では一人の時に五百円以上で食事することなんてめったにないのに)。

 最後の二枚になったとき、ちらっと時計を見たら、10:55だった。

 一枚は味わって食べ、つい、「ごはんおかわり」サービスも受け、牛タンの二枚目は飲み込んだ。

 しかし、もう私はたんなる欲望の塊でしかなかった。

 そして、飛行機に乗り遅れてしまった。

 

 食べている最中に気がついたが、その店には、「従来より食材は全てクリーンで安全な地域であるアメリカとオーストラリア産のものを使用しております」という但し書き?があった。 仙台でわざわざアメリカとオーストリア産の牛タンを食べるために私は飛行機に乗り遅れたのであった。


 結局、観光を三時間ばかりして(ループル仙台という観光バス、250円を利用)、チケットショップで、「ANA株主優待券」(=飛行機の運賃が半額になる)を、8000円で買い、空港で13200円払って、家に帰ったのであった。

 

 いかにも「それらしい」雰囲気のバス。想像(創造)された伝統?というか・・・。 京都の多くの寺社をはじめとする虚偽の伝統よりは、よっぽどましかなぁ。